TBSの年末特番『クイズ☆正解は一年後』の企画から誕生した『クイズ☆正解は一年後 presents あつしの名探偵』は、往年のファミコンアドベンチャーゲームを彷彿とさせる、ミステリー要素と理不尽な難易度が融合した異色の作品です。当初は番組の企画として、ファミコン互換機用のカセットが全国にわずか10本だけ流通し、そのクリア人数を予想するという趣旨で制作されました。結果として、番組が終了するまでにクリア報告者はゼロ。しかし、その話題性から、2023年12月31日にはNintendo Switch版としてダウンロー ド販売が開始され、多くのプレイヤーがこの「意図的に不親切」なゲームの世界に足を踏み入れることになりました。
あらすじ
『クイズ☆正解は一年後』の収録が滞りなく終了したTBSスタジオで、突如としてレイザーラモンRGが遺体となって発見されるという衝撃的な事件が発生します。現場に居合わせた出演者たちは当初、番組のドッキリ企画だと疑いますが、事態の深刻さにMCの田村淳は探偵役を買って出て、真相究明に乗り出します。怪しい挙動を見せる者、動揺する者、普段通りの振る舞いを続ける者など、個性豊かな共演者たちへの聞き込みや現場調査を進める淳。しかし、事件の核心に迫ろうとする中で、淳自身も何者かの手によって命を奪われ、捜査は中断を余儀なくされます。その後、有吉弘行、おぎやはぎの矢作兼、FUJIWARAの藤本敏史へと主人公が交代しながら、次々と犠牲者が増えていく連続殺人事件の様相を呈していきます。
登場人物とキャスト
- たむらあつし(田村淳)
最初の主人公。RG殺害事件の探偵役を買って出るが、真相に近づきすぎたため命を奪われる。 - ますだえりな(枡田絵理奈)
事件の第一発見者。番組企画だと疑うが、徐々に事態の深刻さを認識する。 - たむらりょう(田村亮)
事件後、険しい顔で楽屋に戻り、行方をくらます。淳に手がかりを託そうとする。 - はらにしたかゆき(原西孝幸)
FUJIWARAのボケ担当。RGの遺体発見者の一人だが、事件への関与を嫌がる。最終局面で主人公となる。 - ふじもととしふみ(藤本敏史)
FUJIWARAのツッコミ担当。顔が非常に大きく描写される。事件の真相解明に深く関わることになる。 - ありよしひろいき(有吉弘行)
淳の死後、主人公を引き継ぎ捜査に当たる。当初は事件をドッキリだと思っていた。 - おぎひろあき(小木博明)
おぎやはぎのボケ担当。事件をドッキリだと思い込み、楽屋で事態の終息を待つ。後に被害者となる。 - やはぎけん(矢作兼)
おぎやはぎのツッコミ担当。小木の負傷後、主人公を引き継ぎ捜査に当たる。 - ごとうてるもと(後藤輝基)
フットボールアワーのツッコミ担当。事件後、早々にスタジオを後にする。 - バカリズム
多忙を極め、事件発生時も編集室にいる。捜査協力も多忙を理由に難色を示す。 - くっきー!(くっきー!)
野性爆弾のボケ担当。何を考えているか掴みどころがなく、謎めいたヒントを与える。 - レイザーラモンRG(レイザーラモンRG)
事件の最初の犠牲者。番組の「あるあるネタ」を披露した直後に殺害される。 - みなみかわ(みなみかわ)
事件の展開に興味津々だが、早々にスタジオを後にする。 - いぐちひろゆき(井口浩之)
ウエストランドのツッコミ担当。事件後、真っ先にスタジオを後にする。 - こうもとふとし(河本太)
ウエストランドのボケ担当。作中では寡黙でほとんど喋らない。 - おにごえトマホーク(坂井良多、金ちゃん)
常に喧嘩しており、事件の捜査中も新ネタの考案に余念がない。 - ゆうちゃみ
今が旬チームのタレント。事件を番組の演出だと信じている。 - あかつ(あかつ)
相撲芸人。不審な動きを見せ、当初は有力な容疑者として浮上する。 - けいびいんさん(警備員さん)
TBSの警備員。事件に関する重要な情報を提供する。 - でんせつのカギし(寺田心ことコジジ)
どんな鍵でも開ける伝説の鍵師。子役のような外見をしている。 - おおえゆたか(大江裕)
北島三郎の最後の弟子。事件の真犯人として浮上する。
ネタバレ
事件はレイザーラモンRGの殺害から幕を開けます。淳は捜査を開始し、亮からの「まわし」という手掛かりを得ますが、真相に近 づきすぎたために何者かに襲われ、命を落とします。その後、有吉弘行が探偵役を引き継ぎ、淳が残した「14TAKE」というメッセージの謎や、理不尽なダルマ落としゲームをクリアしながら捜査を進めます。有吉は淳の遺体を発見し、彼の残した探偵ノートを手に入れますが、「オマエハシリスギタ」という謎の声に襲われ、同様に命を落とします。
次に探偵となるのはおぎやはぎの矢作兼。小木が頭部に外傷を負って倒れ、後に死亡したことを受けて、矢作は事件の犯人を追い ます。彼は亮のダイイングメッセージ「14TAKE」が「2014年 竹藪」を意味することを知ります。この情報は、過去の番組企画で使わ れた実在の花屋の壁に書かれた「グロリア」という秘密の言葉をリアルで確認する必要があるという、ARG(代替現実ゲーム)要素が 盛り込まれた難解な謎解きでした。竹藪で淳が埋めたものを見つけますが、ダイナマイトジョンソンに奪われてしまいます。ジョンソンとの100m走ミニゲームでは、正攻法では勝てず、相手のフライングを誘うという意図的な裏技で勝利します。しかし、取り戻したメモは腐食しており、情報は得られません。その後、伝説の鍵師を呼ぶために、怪しい闇バイトサイトを通じて仮想通貨で3億円を調達 し、容疑者あかつが閉じ込められている祠の鍵を開けますが、あかつは既に殺害されており、矢作も何者かに襲われ命を落とします。
探偵役はFUJIWARAの藤本敏史に交代。藤本はこれまでの犠牲者(RG、淳、有吉、小木、あかつ、矢作)の殺害状況を整理し、RGの 「あるあるネタ」にあった「最後の弟子だと名乗るやつ現れがち~♪」という言葉に着目。このヒントから、真犯人が北島三郎の最後の弟子である大江裕であることを突き止めます。大江はRGのものまねに不満を抱いていたことを認め、人を殺す快感を知った快楽殺人者であることが判明。小木が頭部に外傷を負ったのも、井口が転倒したのではなく、大江の犯行であることが明かされます。大江は出演者全員を黒目ビームで殺害しますが、偶然にも原西孝幸だけが生き残ります。
結末
大江裕の黒目ビームにより、すべての出演者が殺害される中、奇跡的に生き残った原西孝幸は「生きる」ことを選択し、最終ステ ージへと進みます。ここからゲームは横スクロールアクションに切り替わり、原西を操作してゾンビと化した共演者たち(RG、淳、有吉、小木、あかつ、矢作、藤本など)が襲いかかる中を戦い進みます。最終的に大江裕とのボス戦に勝利すると、原西が「事件、解決っ!」と宣言し、スタッフロールが流れてゲームは終了します。世界が黒目ビームで滅びた後の物語や、具体的な後日談は一切語られない、不条理かつシュールな結末で幕を閉じます。
感想と考察
『あつしの名探偵』は、その説明文の通り、理不尽で不親切なゲームデザインが際立つ作品でした。特にダルマ落としや穴掘りと いったミニゲームの難易度、そしてARG要素を含んだ謎解きは、プレイヤーの忍耐力を試すものであり、往年の「たけしの挑戦状」を 意識したという開発者の意図が強く感じられました。しかし、その根底には『クイズ☆正解は一年後』という番組への深い愛情と、ファンへのサービス精神が感じられます。
登場人物たちのドット絵の再現度の高さや、彼らの特徴的な言動がテキストに落とし込まれている点は、番組ファンにとって大き な魅力でしょう。特にFUJIWARA藤本の「顔がデカいからや!」という定番のボケがゲームシステムに組み込まれているのは秀逸でした。また、主人公が次々と交代していく展開も、各キャラクターの視点から物語を追う面白さがあり、飽きさせない工夫が凝らされていました。最終的に理不尽なアクションゲームに突入し、シュールな形で事件が解決する結末は、このゲーム全体が持つギャグとシリアスの境界線を曖昧にする雰囲気を象徴しているように思います。これは、現代のゲームではなかなか味わえない、良くも悪くも「古き良き」時代のゲーム体験を再現したものと言えるでしょう。
余談
- 本作の企画は2022年4月に始まり、同年9月に開発に着手しました。グラフィックは2023年1月頃に完成しています。
- ファミリーコンピュータ互換機用のROMカセット版にはセーブ機能がなく、パスワード方式のみが採用されていました。Switch版 はセーブに対応しています。
- ROMカセット版は全国に10本のみ流通し、全て完売したものの、2023年末までにクリアを報告した人はいませんでした。これはゲ ームの高い難易度と、コレクターがプレイせずに保管するケースがあったためと推測されています。
- 脚本は『クイズ☆正解は一年後』の総合プロデューサーである藤井健太郎氏が担当しており、出演者らしい喋り方や面白さのエッセンスを加えています。鬼越トマホークの喧嘩ネタも本人たちが書いています。
- ゲーム中には『クイズ☆タレント名鑑』や『水曜日のダウンタウン』など、藤井健太郎氏が手がける他のTBS番組のネタが随所に 散りばめられています。
- 真犯人の大江裕氏は、それまでゲーム中に一切登場しない人物でした。彼の登場と快楽殺人者という設定、そして黒目ビームによる皆殺しという展開は、プレイヤーを驚かせました。
- 最終ステージの横スクロールアクションでは、特定の操作(コンティニュー時に左を押しっぱなしで決定連打)をすると、バグによりボスを倒したことになる裏技が存在します。
- Nintendo Switch版のダウンロード価格は1,000円(税込)と手頃で、2024年1月11日には特典同梱のパッケージ限定版「コレクタ ーズ・エディション」も発売されました。

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